卓球を始めたばかりの人にとって最初の大きな壁になるのが「ラケットの握り方」です。
握り方ひとつでプレーの特徴が大きく変わり、得意技術や戦い方まで左右されます。
あなたが「もっと安定して打ちたい」「攻撃的にプレーしたい」と思うなら、まずは自分に合った握り方を知ることが大切です。
今回は、基本から応用まで、そして初心者がつまずきやすいポイントやトップ選手の実例まで、ラケットの握り方を徹底的に解説します。
はじめに|なぜ握り方が大切なのか
卓球ではボールに触れる唯一の道具がラケットです。
どんなに良いラバーや高性能ラケットを使っても、握り方が不安定だと本来の性能を発揮できません。
実際、初心者の多くは「力が入りすぎて手首が固まる」「打球時に角度が安定しない」といった悩みを抱えています。
これらの問題の多くは、握り方を見直すことで解決できます。
逆に言えば、正しいグリップを身につけることで、自然と打球フォームも安定し、成長スピードが一気に上がるのです。
シェークハンドグリップ|世界で最も一般的な握り方
現代卓球で圧倒的に多いのがシェークハンドグリップです。
英語の「シェイクハンズ=握手」が語源で、相手と握手するようにラケットを握ります。
最大の特徴はフォアとバックの切り替えがスムーズで、両ハンドで攻撃できるバランスの良さです。
ヨーロッパや中国をはじめ、世界のトップ選手の大半がこの握りを採用しています。
ポイントは、親指と人差し指で自然な三角形を作り、手のひら全体でガチッと握り込まないこと。
軽く持っても落ちない程度の力で、指先に少し遊びを残すのが理想です。
特にバックハンドを多用する現代卓球では、人差し指の位置が打球角度を左右するため、最初に意識すべきポイントです。
ペンホルダーグリップ|日本と中国に根強く残る握り方
ペンホルダーは鉛筆を握るようにラケットを持つスタイルで、日本や中国で長く親しまれてきました。
特徴は、フォアハンドの威力が出しやすく、細かい台上プレーにも強いことです。
王励勤や許昕といった中国の名選手が、このグリップを武器に数々の名勝負を生み出しました。
ただし、バックハンドが制限されやすいという弱点もあります。
従来の「裏面打法」が使えないと守備範囲に限界が出るため、現代では裏面打法(ラケット裏側のラバーでバックを打つ技術)が一般的になりました。
もし「素早く台上を制したい」「相手を前で崩したい」と考えるなら、ペンホルダーは強力な武器になります。
異形グリップ|個性派の選択肢
卓球には一風変わった握り方も存在します。
たとえば「ハンドシェイクに近い中国式ペン」「両面を自在に使うVグリップ」などです。
特に中国式ペンは、シェークとペンのいいとこ取りをしたようなスタイルで、台上の細かさと両ハンドのバランスを両立できます。
マイナーではありますが、自分の感覚に合えば大きな武器になります。
卓球は「型に縛られない自由さ」も魅力の一つで、世界の舞台でも独特な握りから台頭する選手が時折現れます。
初心者がやりがちな握り方の失敗と修正方法
初心者が陥りやすい失敗にはいくつか共通点があります。
ひとつは「力の入れすぎ」です。
ラケットを強く握り込みすぎると、手首の柔らかさが失われ、ボールを回転させる感覚がつかみにくくなります。
修正法としては、ボールを軽くつつくだけの「タッチ練習」を取り入れると、自然と余計な力を抜けるようになります。
もうひとつは「人差し指の位置がラバーに乗りすぎる」パターンです。
指が内側に入りすぎるとフォアのスイングが制限され、伸びやかなスイングができません。
改善するには、人差し指を少し外側に置き、打球面に力を分散させる意識が有効です。
最後に多いのが「ペンホルダーで指が硬直する」ケースです。
特に裏面打法を覚える前の段階で、小指や薬指をラケットの裏に強く押し付けてしまうと、スムーズな切り替えができなくなります。
コツは、裏の指を軽く添える程度にし、自由度を残しておくことです。
子どもや初心者に教えるときのポイント
小学生や初心者にラケットの握りを教える際は、「正しい形を押し付ける」のではなく、「自然に打てる形を見つける」ことが大切です。
特に子どもは手が小さいため、大人と同じ感覚でシェークを持たせても窮屈になります。
その場合は、指を少し短めに伸ばし、ラケットを手のひらより少し外に出すようにすると振りやすくなります。
また、指導で効果的なのが「握力を使わずにボールリフティングをさせる」練習です。
軽く持ってもボールを続けられるとわかれば、無駄に力を入れる必要がないと体で理解できます。
子どもの段階で「柔らかく持つ感覚」を身につけておけば、将来的に回転をかける技術の習得がスムーズになります。
トップ選手のグリップとプレースタイルの関係
世界のトップ選手たちは、握り方にも個性が表れています。
馬龍(中国)は典型的なシェークハンドですが、人差し指をやや深く置き、バックハンドの安定感を重視しています。
これが彼の高速バックドライブの強さにつながっています。
一方で張本智和(日本)は、親指と人差し指の三角をやや広めにとり、フォアの威力を最大化するスタイルを選んでいます。
若い頃から攻撃的な両ハンドを使えたのは、この握りの影響も大きいと考えられます。
ペンホルダーの代表例では許昕(中国)が有名です。
彼は裏面打法を駆使し、フォアの爆発力とバックの安定感を両立させました。
従来のペン選手が抱えていたバックの弱点を克服した好例です。
このように、トップ選手たちの握りを分析すると、自分が目指すプレースタイルに応じてどう握りを工夫すれば良いかのヒントが見えてきます。
正しい握りを定着させる練習法
正しい握りを学んでも、試合になると無意識に強く握りすぎてしまう人が多いものです。
その改善には「素振り」と「軽打ち」が有効です。
ラケットを軽く持ち、ボールを強く打たずにコントロールだけを意識する練習を繰り返すと、自然に力加減が整っていきます。
また、練習の合間に握りを見直す習慣をつけるだけでも効果があります。
多くのコーチが「技術練習よりもまず握りを正すべき」と口をそろえるのはそのためです。
まとめ
ラケットの握り方は、卓球のプレースタイルを決定づける基礎です。
シェークで両ハンドのバランスを重視するのか、ペンで前陣速攻を目指すのか、それとも異形グリップで独自のスタイルを築くのか。
どの握りにもメリットとデメリットがあり、正解は一つではありません。